歯の根の先にできた、巨大な膿み袋
投稿日:2016年10月28日
カテゴリ:10.歯を抜かない症例
歯の根の先にできた膿の袋を取り除いて歯を保存した症例①
右下奥歯の痛み
「右下の奥歯が痛む」ということで来院されました。
赤矢印の部分をご覧下さい。丸い形に黒く抜けた状態になっているのがお分かりいただけるでしょうか。
これは膿み袋です。
過去に大きな虫歯ができたため、神経を除去し、薬を詰めているのですが、人によっては根の先まで薬を入れることができないため、長い時間をかけて、骨が溶け、膿み袋ができてしまうのです。
拡大X線写真
患歯を拡大します。
歯の根には過去に詰められた薬(赤矢印)が入っております。
この薬は昔に使われていたもので、除去が大変難しいものです。
この除去が難しい昔の薬を除去しなければ、膿み袋(赤点線枠)をつぶすことはできません。
一般的な治療
このような場合、一般的には写真のように被せ物はずし、歯の上から器具を入れて、歯の中の汚れをかき出し、膿み袋をつぶしていきます。
しかし、本症例のように膿み袋があまりにも大きくなると、このような一般的な治療法では膿み袋は消えません。
さらに、この症例の場合、除去の難しい昔の薬が入っており、一般的な治療方法ではこの薬の除去は、ほぼ不可能です。
そこで歯牙再植術を説明し、同意を受けました。
歯牙再植術とは、いったん歯を抜き、抜いたことによってできた穴から膿み袋をかき出し、再び歯を元に戻す、という治療法です。
いったん抜いた歯と膿み袋
いったん抜歯した歯と歯の根の先にあった膿み袋です。
歯の半分くらいの大きさまで育っています。
この後、抜歯した歯を口の外で薬を詰めるという治療をします。
口の中ですと歯の内部を覗き込むことはできませんが、口の外ならばできます。
また、器具の操作も口の中ですと制限がありますが、口の外ならば自由に操作ができます。
昔の薬を除去した写真
昔の薬を除去した所です。
口の中では器具の操作が難しくて除去できませんが、
口の外ならばこの様に除去することができます。
術後
いた場所に再び戻し、抜けてこないよう固定しました。
1ヶ月もすれば動かなくなります。
3割負担の方で、約\6,000の治療です。
しかし、残念ながら、保険の治療の場合、膿み袋があった部分は骨がなくなったままです。骨ができるのに2年ほどかかります。
膿み袋によってなくなってしまった骨の部分に人工骨を補填すると保険がきかなくなってしまうのです。
(歯根嚢胞、良性腫瘍摘出腔等の充填材料として骨修復を図る場合、保険未適用)
人工骨を用いてより良い状態にしたい場合は\44,000(税込)です。
治療費 | 6千円程度(保険診療) |
---|---|
リスク・注意点 |
・外科処置が必要となるため、負担が大きくなります。 |
歯の根の先にできた膿の袋を取り除いて歯を保存した症例②
歯の根の先が化膿して、膿袋ができた症例です。
膿が骨を溶かし、肉を突き破り出てきています。
普通はかぶせ物を外して治療をするのですが、高額なかぶせ物であったため、患者様がそれを望みませんでした。
最近の歯の根の治療では、膿袋ができる原因は根の先ではなく、かぶせ物の中にある虫歯でぐずぐずになった部分である とされています。ですから本当は外して治療した方が良いです。しかしこの治療は5年ほど前に私が行った治療であり、その時にぐずぐずの部分はかなりきっちりととっていました。
かぶせ物を外さず、歯の根の先を直接治療することになりました。
歯と同じくらいの大きさの膿袋があって、骨がなくなっていました。
根の先を切り取って、薬を詰めました。
傷口を縫い付けました。
2週間後の写真です。
傷口はかなりきれいに治りました。
昨今の根の治療では、マイクロスコープと呼ばれる顕微鏡とCT(断層撮影装置)を用います。しかし、設備だけで1500万円以上かかるので、保険治療ではできません。
当医院は 咬み合わせ の機器に関してはかなりの設備を擁しています。
しかし、マイクロスコープやCTは予算の関係で持っておりません。
そのため、歯を残したい時は上記の治療を行っています。
保険診療です。3割負担で6000円程度でした。
奥歯では 歯牙再植術 という方法で行っています。
治療費 | 6000円程度(保険診療) |
---|---|
リスク・注意点 | ・外科処置が必要となるため、負担が大きくなります。 ・治療後は歯茎の腫れ、内出血などが起こる場合があります。 |
膿んだ歯(歯根嚢胞・歯根肉芽種)を残す意図的再植術の症例①
歯の根の先に膿がたまる病気があります。
普通は歯に穴を開け、歯の中の汚染物質を除去することにより、治療します。これを根管治療と言います
しかし、あまりに病気が進むと歯の根の先に膿袋ができてしまい、なかなか治りません。
そこで、一旦歯を抜き、膿袋を掻き出して、再び抜いた歯を残すという治療を行うことがあります。
外科的歯内療法の一つで意図的再植術と言います。
1ヶ月もすると抜いた歯はくっつき、普通の治療と同じように差し歯を作っていくことができます。
治療費:3割負担で約5,000円(意図的再植術)
治療期間:手術をして歯がくっつくのに約1か月かかります。その後根管治療を行います。合計3か月程度です。
治療回数:手術は当日1回 ただし、術後1か月したら根管治療(保険)を行います。それが約6回です。
リスク:いざ抜歯したら、実は歯が割れていたという事があります。その場合はいくらこの治療をしても根管治療を行っても膿や痛みは止まりません。その場で抜歯となります。抜歯のリスクがあると同時に確定的な診断が行えるメリットがあるとも言えます。
膿んだ歯(歯根嚢胞・歯根肉芽種)を残す意図的再植術の症例②
残り少ない歯を少しでも長持ちさせたいのですが、膿袋からの排膿がいつまでたっても治まりませんでした。
青線で囲まれたところが膿袋です。
普通歯の上から穴をあけて歯の中の汚染物質を取り切れば膿は治まってくるのですが、1か月治療しても治まりません。同じことをやっても治りはしないので、新たな方法で治療することにしました。
いったん歯を抜いて、膿袋を除去し、口腔外で歯の治療を行い、それを抜歯した所に再び戻すという治療法です。意図的歯牙再植術と言います。
開業して15年以上たちましたが、100症例はやっていないと思いますが、それに近いくらいはやっていると思います。5年生存率も90パーセント以上だと思います。
一旦抜いて、口腔外で歯の治療を行いました。
8か月程度ですが、膿袋は無くなっています。
年齢 性別 | 70代 女性 |
治療費用 |
保険2割負担 意図的植術 約5,000円 |
治療期間 | 抜いた歯がくっつくのに約1か月、そこから被せ物作成で1か月 |
リスク | 歯が虫歯で崩壊していた場合、その歯を残すことはできません |
■ 他の記事を読む■