出っ歯と保険被せ物とかみ合わせの分析
投稿日:2023年6月28日
カテゴリ:03.入れ歯の症例 09.咬み合せの症例
前歯がぐらぐらする、前歯が出ている という事を主訴としていらした50代後半の女性です。
前歯はそれを支える骨がほとんどなくなっているため、残せません。
これは単なる歯周病・歯槽膿漏ではありません。
かみ合わせが原因で前歯が壊れた症例です。
具体的にはかみ合わせが低くて、下の前歯が上の前歯を突き上げることによって、上の前歯が前に触れてしまってダメになった状態です。
模型を咬合器につけて分析します。
咬合器に付けました。患者さんの歯列と顎の関節との位置関係と動きを近似的に再現する機械です。
完全に再現することは不可能です。顎の動きは再現不可能なくらい複雑です。
当医院院長は歯科補綴学会(被せ物・かみ合わせの学会)の専門医であり、咬合器を日々使っております。主にKAVO咬合器、パナデント咬合器、SAM咬合器を使用しております。
写真はKAVO咬合器です。
きれいな歯並びの場合、下の金属の平面に前歯部から臼歯部までほぼ平行に並びます。
この方の場合、前歯が傾斜することによって短くなっています。
顎の高さを調べます。この方の場合標準値よりかなり低くなっています。
歯並びが悪く、1本1本の歯が斜めに倒れていると、その分だけかみ合わせが低くなり、そのしわ寄せが前歯に来ます。
「前歯だけ治してほしい」と言われる方が結構います。しかし前歯の傾斜は結果であって、原因は奥歯にあります。
奥歯が無かったり傾斜した状態で前歯の形を治すのは、柱もまともに立っていないのに屋根の建築に取り掛かるようなものです。
術後です。
かみ合わせを標準値まで上げて、前歯に保険の被せ物を入れました。
出っ歯が改善したばかりでなく、前歯への過剰な負担が無くなりました。
奥歯に被せ物を入れてかみ合わせを高くしています。
奥歯はかみ合わせを考え、かつ全く歯を削らずに入れたため、保険ではできませんでした。
年齢 性別 | 50代後半 女性 |
治療費用 |
かみ合わせの分析:模型・フェースボー・中心位バイト \18,700 保険診療分:3割負担 約\50,000 自費診療分:\11,000×6本=\66,000 |
治療期間 | 6か月 |
リスク |
入れ歯がうまく入らない、治療してもどんどん悪くなってくる、という方はたいていの場合歯並び・かみ合わせが悪いです。 矯正治療をせずに歯並びの見た目を治そうとすると、骨に埋まっている歯の根の方向と、表に見えている被せ物の方向が全く違うことから、その歯に力が加わると歯が折れて早期にダメになってしまいます。 「被せ物だけで何とかしてください、早く治して下さい、忙しいんです。」と主張される方がいらっしゃいますが、被せ物で歯並びを治した方はかなり高い確率で早期に歯を失い、入れ歯になります。たいてい後悔します。 美容歯科の名のもと歯並びを被せ物で治した方は、たいてい入れ歯になって後悔します。 今回のケースではかみ合わせの分析の結果、被せ物だけで治療できましたが、多くの症例では矯正治療が必須であることを御理解ください。
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