前歯が折れた・・・原因は奥歯にあった №1
投稿日:2016年10月28日
カテゴリ:09.咬み合せの症例
前歯が壊れたのは結果に過ぎず、原因は奥歯にあった症例。
前歯が折れてしまいました
60代の女性の方です。
左上(向かって右)の前歯が折れてしまったため、来院されました。
以前にも何度かはずれているとのことでした。
前歯がかけました
折れてしまった歯のさらに左奥の下の歯は表面の白い部分がかけてしまったとのことでした。
この歯も以前からたびたびトラブルを起こしてていたとのことでした。
レントゲン
全体をみわたすレントゲン写真です。向かい正面で見るので左が患者様の右となります。
左右差が極端であることがわかります。
模型分析
ただ、前歯だけを治したのではその場しのぎにしかならないと判断し、あごの動きをシミュレートすることとしました。
写真はあごの動きをシミュレートするアーティキュレーターという器械に患者様の模型を装着したものです。
左右差
お口を見ただけでは左右差はわかりません。どこを基準に高さを見ていけばいいのかわからないからです。
アーティキュレーターにて分析すると、写真のように左右差があることがわかります。左右の足にちがう種類の履物を履いたら非常に歩きにくく、体に負担をかけてしまうことは想像できるとおもいます。
まして口という小さな空間にこれだけの左右差があれば、何らかの障害が出てくるのは想像に難くありません。
しかし、左右でちがう履物を履いたときと同様、筋肉は慣れてしまうのです。そして気がつかない間に体の弱い部分に疲労が蓄積されていくのです。
右側面観
赤線が基準線です。
金属の台と平行になるのが理想です。
左右差ばかりでなく前後差もあることがわかります。
左側面観
こちらも奥歯が基準よりだいぶ長いことがわかります。
右側面観
上下でかみ合わせたところです。
下の奥歯が上の奥歯よりも、上のほうにのびているのがわかります。
左側面観
上の奥歯が下の歯を押しつぶすようにかみこんでいつのがわかります。
下の歯は、上の歯に合わせて被せ物を作られたので、だいぶ短くなってしまっています。
顎の動きをシミュレートする
下あごを左(向かって右)に動かしました。
右の奥歯ばかりあたってしまい、前歯は全く当たりません。
顎の筋肉は奥歯が引っかかることを非常に嫌います。
何とか上下の前歯を当てようとして不自然な動きをします。
その時過大な力が前歯にかかるのです。
前歯が壊れたのは前歯の状態が悪いためではなかったのです。
奥歯に強い引っ掛かりがあったことが原因だったのです。
口腔内
咬実際の口腔内では写真のようになっていました。
みごとに奥歯が引っかかっています。
「カチカチかんだときは奥歯があたって、前歯はあたらない。
ギチギチかんだときは前歯があたって、奥歯はあたらない。」
これがかみ合せの基本なのです。
対角線の法則
左前の歯にトラブルが出たときは、たいてい右の奥歯に原因があります。
逆に右前の場合は左奥です。
このように対角線で症状が現れることが多いのです。
口腔内写真、模型によるシミュレートを患者様にお見せして、前歯だけの治療ではまたトラブルがでること、基準線にそって歯の長さを調節すれば、あごの動きがよくなり、歯に過大な力がかからなくなり、首や肩の筋肉への負担も小さくなる可能性があることを説明いたしました。
保険を使わない高額な治療でも左右差・前後差を考えなければ、悪い機能をそのままに材料だけ置き換えていることになると思うのです。
歯科オペラデンタル浜松は材料よりもまず、設計を大切に考えております。
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